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アメリカ(ucc4A403条)やEU(Euファイナリテイ指令98/26/EC)では,こうしたマルチラテラル・ネッティングの有効性も立法で明確化しているが,この点で法的対応を講じていない日本においては法的有効性も不明確である。
すなわち,ネッテイング契約が第三者に対抗できるか否かを判断する場合,約定相殺ではなく法定相殺で有効性が立証されるか否かを考える必要があるが,日本の民法解釈上,三者間以上の法定相殺は認められていない。
このため,このマルチラテラル・ネッティングは,まず参加者間で債権・債務の置換えを合意に基づいて行った上で2当事者間相殺を行うものと解される。
すると,倒産時以降に債権・債務の置換えを行えば,一般債権者を害する債権譲渡と解されて管財人に否認される(破72条,会更86条)可能性が高い(ただし,相殺権は保護されるため,破産法104条・会社更正法49条との関係で,@債権譲渡の「原因」として将来債権の停止条件付譲渡契約を締結し,A債務者の合意を相殺合意の時点で得ておき,B停止条件の内容を支払停止など倒産手続開始前の事由に設定しておけば倒産法上も有効だとする解釈も出されている)。
デリバティブを使ったさまざまな取引の中にはネッテイングのほかにも法的不確実性が残るものがあり,徐々に立法的な解決が図られてきた。
たとえば,デリバテイブは刑法上の賭博罪(刑185条.186条)に該当する可能性が指摘されていた。
そのため,1998年12月1日に施行された「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律」(金融システム改革法)等の法改正により,デリバテイブ取引の多くが銀行,証券等の業務とされ,一応合法化された。
ただし,依然カバーされていない部分も多く,一定の基準ないし要件を満たす金融デリバテイブ取引は賭博罪の構成要件に該当しない旨を規定する立法を行うべきとの意見書も出されている。
なお,証券会社には,日本証券業協会や東証の各種規則および証券取引法40条により,顧客がデリバテイブ取引を開始する前に予め取引の概要,損失可能性等を記載した説明書を交付し,十分な説明を行った上で顧客の判断と責任で取引を行う承諾書(または確認書)を提出してもらう義務が課されている。
また,説明義務違反に関する裁判例も出ている(東京地判平6.6.30判時1532.79など)。
さらに,2001年4月1日から「金融商品の販売等に関する法律」と「消費者契約法」が施行された。
これらの法律は対象をデリバテイブに限っているわけではないが,@「金融商品の販売等に関する法律」が金融商品の販売に際して販売業者に重要事項の説明義務を課し,違反した場合には違反によって顧客に生じた損害を賠償させている点,A「消費者契約法」が消費者保護の観点から,民法上の詐欺・強迫・錯誤に該当しない場合であっても不当な勧誘行為に対する取消権を与え,有効に締結された契約のうち消費者の利益を一方的に害する契約条項を一部または全部無効とする点,で注目される。
米を対象とする商品先物取引は江戸時代にすでに大阪・堂島の米相場会所で行われていたが,金融や証券に関するデリバテイブの歴史は新しく,取引所による規格化が最も進んでいる先物においても金融先物取引や証券先物取引は近年になってから開始された。
金融先物取引は,1988年に成立した金融先物取引法に規定されている金利,通貨等を対象とする取引で,1989年に設立された東京金融先物取引所で日本円短期金利先物取引,日本円・米ドル通貨先物等が取引されている。
一方,証券先物取引は証券取引法上の有価証券そのものまたはその有価証券を基礎として算出される有価証券指数等を対象に行われる先物取引で,証券取引所で取引されている。
この端緒となったのが1985年に東京証券取引所で開始された長期国債先物取引で,@公社債残高の累増と金利の自由化の進展に伴い,債券の価格変動への対応の必要性が高まってきたこと,A海外の主要金融・資本市場において先物取引が重要な一分野として定着していることなどから,わが国でも債券先物市場を創設し海外市場と同様に債券の価格ヘッジ手段を備えるべきであるとの機運が高まり,戦後初の金融先物市場として開設された。
この後,徐々に取引を拡大し,現在では東京証券取引所で国債先物取引(長期,超長期,中期),東証株価指数(TOPIX)先物取引など,大阪証券取引所で日経平均株価(日経225)先物取引,日経株価指数300(日経300)先物取引などが扱われている。
一方,証券オプション取引は,平成元年に大阪証券取引所で日経平均株価(日経225)オプシヨン取引,東京証券取引所で東証株価指数(TOPIX)オプション取引が開始され,1990年には東京証券取引所で長期国債先物オプション先物取引が開始された。
一方,取引所を通さずに行う店頭デリバテイブ取引については,取引所以外で取引所の相場を利用した差金の授受を行うことを禁じた証券取引法201条や賭博罪を規定した刑法185条,186条に該当する疑義があったが,1998年の証券取引法改正により,疑義なく取引を行うことが可能になった。
現行の証券取引法2条17項〜24項は,証券デリバテイブについて,東京や大阪の証券取引所で取引される証券先物・オプションを有価証券先物取引(17項),有価証券指数等先物取引(18項),有価証券オプシヨン取引(19項)とし,外国有価証券市場で取引される証券先物・オプションを外国市場証券先248第4章その他の有価証券物取引(20項),取引所以外の店頭市場で取引される先渡・店頭オプシヨン・スワップについては有価証券先渡取引(21項),有価証券店頭指数等先渡取引(22項),有価証券店頭オプシヨン取引(23項),有価証券店頭指数等スワップ取引(24項)と呼んで各々規定している。
そこで以下,最も代表的な有価証券先物取引,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引について順次説明しよう(なお,設例は東京証券取引所のホームページから引用した)。
有価証券先物取引とは,「売買の当事者が有価証券市場を開設する者の定める基準及び方法に従い,将来の一定の時期において有価証券及びその対価の授受を約する売買であって,当該売買の目的となっている有価証券の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引」(証取2条17項)をいう。
具体的には東京証券取引所の債券先物取引(国債先物取引)などが該当する。
債券先物取引は,金利変動リスクを回避したり,資産運用手段の多様化・取引の活発化に寄与するなど大きな役割を果たしている。
そこで,証券取引所の国債先物取引の仕組みを述べた後,取引の具体例を見てみよう。
(a)証券取引所の仕組み証券取引所の有価証券市場で有価証券を売買することは本来,証券取引所の会員に限ってなし得る(証取107条)が,有価証券先物取引(国債先物取引等)では会員以外の証券会社,外国証券会社および登録金融機関にも証券取引所が取引資格を与えることができる(証取107条の2)。
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